南太平洋の島々からなる国、ツバルは、平均海抜が2mもなく、気候変動による海面上昇の影響を最も受けやすい国と言われています。また首都フチフチには、人口約1万人のうち半分が集中し、急激な都市化にともなう環境問題も発生しています。
島国日本は、規模の大小はあれ、これらの問題と無縁ではあり得ません。また、日本は既にツバルに様々な支援を行い、非常に感謝されています。以下でツバルの抱える問題と日本の貢献をご紹介します。
まずはゴミ問題から。
ツバルではゴミは、焼却等せず圧縮して処分場に積み上げるだけです。土地の狭いツバルでは、このままではすぐにゴミでいっぱいになってしまいます。また、第二次大戦時に米軍が飛行場建設のための採石した大きな穴(ボローピット)が残っています。その穴にゴミが不法投棄され、満潮時には海水が入り込みます。さらに下水がそのままそこに流れ込み、大変不衛生な状態です。政府ではボローピットの埋立を考えているのですがその土が無く、外部から土を取寄せると大変高くつきます。
そこで、ボローピット、ごみ処理、下水処理の3つを、うまく組合わせることにより解決する方法を探る試みが検討されており、JICAや環境省も協力予定です。
次に、水資源に関して。
飲み水を雨水に頼っていたツバルに海水淡水化装置が導入されました。私は開所式に立ち会うことが出来ました。また、これまでは高価な輸入燃料でしか発電出来ませんでしたが、今回太陽光発電の施設も建設され、淡水化装置を現地の再生可能エネルギーで運転できるようになりました。これらの施設は日本の援助によるものです。日本の技術・援助がこういった場所で役立っているのは本当に嬉しいですね。
最後に国土保全について。
ツバルでは一部海岸の浸食が進んでいます。そして気候変動により一層の悪化が懸念されています。
島と島を繋ぐ道路(コーズウェイ)も実は、海岸浸食を助長してしまっています。この道路を作ることによって、島を形成している星砂の流れが変わり、砂が減った地域で海岸浸食が進んでいるのです。現在は砂の堆積状況を調査し、場合によっては、このコーズウェイの下に、海水の通る穴を開け、海の流れを取り戻すことも検討されています。
また、マングローブを植林して、海岸浸食を食い止めようという取り組みが日本のNPO法人と実施されています。私もこの試みに賛同し、マングローブを植えてきました。ツバルの環境では生育に時間がかかるようですが、このマングローブが育った姿を確認できればと思います。
もう一つ、海岸浸食に対する試みとして、「星砂プロジェクト」があります。この星砂、日本では西表島と竹富島の砂浜にありますが、ツバルはサンゴ礁の上にこの星砂が堆積して出来た島です。「砂」と名前がついていますが、実はこの星砂は、有孔虫という原子生物の殻なのです。ツバルの自然を守りつつ国土を補強するために、JICAや東京大学の協力のもと、星砂(有孔虫)を養殖する「星砂プロジェクト」を進めています。実用化されれば、自然環境を壊さずに国土強化が可能になります。大変時間はかかるかもしれませんが、私は期待をしています。成功すれば、他の島でも応用できるはずです。
このように、ツバルにおいて日本は様々な協力をしています。現在、まだ個々のプロジェクトに留まっているものもありますが、海水の淡水化装置を太陽光発電によって作った電気で動かそう、という例に見られるように、ゆくゆくは日本の最先端の技術を有機的に統合し、ひとつの島をまるごと支援してゆきたいと私は考えています。都市化に対応するインフラや上下水道の整備。廃棄物の収集、運搬、処理システムの確立。燃料を輸入するのではなく、太陽光や風力、地熱など、その島に適した自然エネルギーの導入など、一つ一つのプロジェクトを単独で支援するのではなく、パッケージで提供する。こういった総合的な支援が成功すれば、それは他の島でも応用可能になるはずです。
途上国の発展に伴い、環境問題は必ず発生します。そんな時に、日本は優れた環境技術で問題解決に貢献できる。これは日本の大きな強みになると思います。
また私達は、世界中が決して逃れ得ない気候変動の危機に直面しています。日本が「環境戦略国家」を目指すことは、日本のために、そしてまた世界のためになることであると確信しています。