人口が経済に与える影響
経済と人口の関係について考える「人口経済学」においては、人口オーナス、人口ボーナスという考えがあります。人口オーナスとは、お年寄りが増え、働き盛りが減った結果、人口が経済発展にマイナスに働く状態です。よく言う「みこしの担ぎ手が少なく、乗り手が多い状態」とも言えます。人口ボーナスはまさにその逆で、みこしの担ぎ手が多く、乗り手は少ない状態で、人口が経済の発展を支えています。
日本は90年代には人口ボーナス期を終え、人口オーナス期に入っています。中国はこれまでは人口ボーナスの真っただ中でしたが、そろそろ終焉を迎え、今後人口オーナス期に入るといわれています。また、インドでは人口ボーナス期が2040 年頃まで続く見通しです。
人口オーナス期に必要な政策とは、まず社会保障を整備し、世代間の格差是正に取り組むこと、そして、女性やお年寄りが活躍する場を確保し、新たな労働力を得ることです。最後に生産性を上げて、少ない労働力でも国を維持することのできる成長を維持することがポイントとなります。
環境技術によるイノベーションと都市開発
その上で、日本にしかできないビジネスを生み出すこと、すなわちイノベーションを起こさなければなりません。そうしたイノベーションが期待される分野のひとつは、間違いなく環境技術です。
アジアの都市はどこも、急速な都市への人口集中に対し、公共インフラの整備が遅れています。都市の公共交通網は貧しく、すべてが膨大な排気ガスを生み出す車に依存しています。その結果慢性的な交通渋滞と大気汚染に苦しんでいるのです。たとえば、ジャカルタでは、すべての車とバイクを同時に道路に出すと、その合計は、道路の総延長より長いといわれます。
この様な都市に対しては、鉄道の延長、沿線都市の開発が必要でしょう。さらには、上下水道の整備、ごみ処理の問題、住宅建設など、過密都市の抱える問題は多岐にわたり、このままでは遠からずして、深刻な環境問題が露呈することは目に見えています。そして、日本はそのすべてについての苦い経験と、それを克服するノウハウやイノベーションを保持しています。これらの技術を、単体ではなくて「まるごと」、パッケージとして輸出していくことが大切です。それが日本にとっての環境協力となり、同時に新たなビジネスチャンスとなるでしょう。