教育の現状
教育は、人間が自立し、健康で文化的な生活を営んでいくための基礎であると同時に、この社会の発展を根底から支えている、国家にとって常に最重要の課題です。全ての国民に生き抜く力を授け、それを自国のみならず世界と共有していくことが、世界の平和と直結しています。
過去、どのような環境にあっても、やる気さえあれば、国際的にも最高水準の教育が受けられるという教育機会の平等が、日本が誇るべきところでした。しかしこれが、現在大きな危機にさらされています。
子どもの貧困問題
とくに子どもの貧困に関しては、教育の現場から、深刻な声が次々と寄せられています。病気やけがをしても病院に行けず、保健室ですませてしまう。修学旅行に行けない。給食が食べられない夏休み中に、痩せてしまう(給食が唯一の食事であるため)。交通費が払えないということで、高校を中退してしまう・・・。挙げればきりがありません。
さらには両親の収入と、子どもの学歴や将来の就職や収入には大きな相関があることもわかってきました。それにもかかわらず、日本は、諸外国と比較しても、教育費の多くを国の予算ではなく、家計に頼っている状態にあります。改めて、教育の機会の平等を確保していくことを、真剣に考えていかなければなりません。
多様な学びのスタイル
具体的な提案を一つします。高校における無償の職業訓練です。現在、日本の企業は、国際的な競争にさらされています。このため、時間と手間のかかる企業内の職業訓練を実施するだけの体力を確保できず、結果として、即戦力となる人材を求めています。このため、社会に出る前の職業訓練を充実させないと、子どもたちが将来、安定した職に就くことが難しくなります。
子どもが自らの将来を考え、いかにして自立していくのか。そうした自立のための基礎訓練を得るためには、中学段階における進路指導の拡充のみならず、高校における就職支援と職業訓練カリキュラムの充実が有効です。そしてそのどの段階においても、企業の全面的な協力を確保した上で、本当に社会から求められている人材像を明確にしたうえで、改革を進めていかなければなりません。
スイスでは高校から職業訓練に進む学生は約7割と大半を占め、希望者は職業訓練の後、さらに高度の職業訓練終了者向けの大学に進むこともできます。また、韓国でも、多くの企業との連携により、それらの企業が実際に必要としている人材を育てるマイスター高校が創設され、大きな成果を上げています。日本でも、こうした諸外国の成功事例を、文化的な相違を慎重に考えつつも、どんどん取り入れていくべきです。
まずは社会に出る前のこうした職業訓練を鍛え、これをさらに、現在不運にも失業されてしまっている方々への支援として発展させていきます。