理念

石原氏人類はこれまで、様々な苦難を乗り越え、今日の発展を築いてきました。結果として、いまや地球の人口は70億人を超え、1日に20万人のペースで増え続けています。特に産業革命以降の人口増加は急激で、この四半世紀足らずの間には、地球の人口は20億人も増えています。

新たな命が私たち人類の一員としてこの世に生まれてくることは、本当にすばらしく、喜ばしいことです。子どもたちこそ、未来の地球を担う存在であり、私たちはそうした子どもたちのために、先人たちの意思と誇りを受け継ぎ、よりよい社会を築いていかねばなりません。

持続可能な社会を目指して

しかし、今の地球の現実として、食糧の供給が可能なのは50億人が限界であり、電力などのエネルギー供給が可能なのは20億人が限界と言われています。私たち、そして将来生まれてくる子どもたちの地球の資源は有限なのです。

このように限りある地球の資源に対して、地球の人口は今世紀中に100億人にまで迫る勢いで増えています。この過程で、地球の自然環境はますます破壊され、限られた資源をめぐる国家間の緊張は高まる方向にあります。ここに何も手を打たなければ、今世紀中に、人類は滅亡する可能性が指摘されはじめています。

こうした背景から、私たちは、これまでのような大量生産、大量消費の生き方を続けていくことはできません。もちろん、誰もが等しく健康で文化的な生活を営むことができる社会の実現は日本の国是であり、その追求の手を緩めることはありません。しかし、現在の私たちの人生をより豊かなものにしていくとともに、私たちには、次の世代に対する責任があることを忘れてはならないのです。

いまのやり方は本当に持続可能なのか。それが子どもたちの未来を犠牲にしてはいないか。私たちだけではなく、子どもたちも、そのまた子どもたちも、いまのやり方を続けていけるのかどうか。私たちは、なにかを決断するにあたって、こうしたことを常に自問自答していかなければなりません。

経済も、福祉も、外交も、およそすべての政策は、いかに今の私たちにとって都合よく見えたとしても、それが次の世代まで続けていけないような内容であれば、とるべきではありません。これは非常に勇気のいることではありますが、この美しい地球を守っていくということは、政党の違いはもちろん、全ての価値観の相違を超えた、全人類の義務なのです。

解決のための方法論

こうした問題を解決する手法には、フィード・バック方式とフィード・フォワード方式という2つのものがあります。何かをして、その結果生じた問題を分析し、次の行動でそれを修正するというのがフィード・バック方式です。これに対し、これから起こる問題を予測して、それを解決するような行動をするがフィード・フォワード方式です。

一例をあげるなら、洗濯物を干して、雨が降ってきたらそれを取り込み、雨が上がったらまた干すというのがフィードバック方式です。これに対して、天気予報を見て、干すか干さないかを決めるのがフィードフォワード方式です。

フィードバック方式は、結果が出て(雨が降って)から行動を修正する(洗濯物を取り込む)ので、そのときどきに取る行動に迷うことはありません。しかし、雨が降るまでは行動を起こさないため、洗濯物は必ず濡れてしまいます。つまり、失敗が決して許されない場面では、フィードバック方式は場当たり的であるため、採用できないのです。

このフィードバック方式に比べ、フィードフォワード方式は、非常に面倒で複雑なステップを踏んでいかねばなりません。それは未来を予測し、問題を抽出し、行動計画を立てて、行動に移すというものです。こちらの方式は、常に取るべき行動に迷いはします。しかし失敗が決して許されない場面では、この方式以外の選択肢はありません。たとえば、外科手術をとりおこなう医師の方々は、当然、フィードフォワード方式で病気と闘ってくれているわけです。

具体的アクションへ

環境問題は、人類がどのように資源を有効に活用していくのかという問題と常にセットです。そしてこの問題は、結果が出てからやり方を変えるわけにはいかない、フィードフォワード方式で対応しなければならないものでもあります。なぜなら、地球に人類が住めないような環境になってから、それを反省しても遅いからです。

これは極めて困難な問題です。しかし今こそ、私たちは勇気をもって立ち上がり、この美しい地球を守るための具体的な行動に出なければならないのです。