政策

税金改革/予算

● 官僚による硬直的配分から戦略的重点的配分へ

写真:石原のぶてる

我が国はこれまで、国民一人一人の努力の集大成とも言うべき国家の富を、国家にとって戦略的に重要とされる社会資本の充実・国防・教育などの分野に重点的に配分してきた。そのシステムは地方に金を流し、富の均衡をはかる上でも有効に機能してきた。また、郵便貯金・簡易保険によって集められた資金は、財投、財政投融資として、それらを補完するシステムとして機能した。しかし、これらのシステムは、いつしか硬直化し、前年度の実績を踏襲することのみを良しとする官僚の手によって固定化されてしまった。

国家の富、なかんずく大都市において集められた富を地方に再配分するシステムは、我が国において、公共事業と地方交付税交付金、さらには税制とう3本のパイプしかない。そして、それが長く官僚中心の中央集権システムを支えてきた。その結果、各自治体は人のいかない公民館や美術館、車の通らない高速道路や、収支見込みのたたない鉄道路線、船の入らない港湾を乱造してきた。年度末になるととたんに道路工事が増え、真夜中の道路が渋滞する風景は、大都市ではいまも変わらない。そこには、同じ投資するなら経済効率の高い物を、といったインセンティブは働かない。ただ、どれだけ工事を発注できるか、どれだけ多くの予算を消化できるかと言った観点のみが支配してる。公共の投資に対する再評価システム、つまり、使いっぱなし、作りっぱなしではなく、投資した金額がどれほどの経済波及効果を及ぼすのかを点検し、経済効果の低い投資はやめるべき時に来ている。

都市・農村を問わず、我が国の社会資本はまだまだ整備されているとは言い難い。電柱の地中化などは都市の中でもごく一部だけだし、一日中閉まったままの「開かずの踏切」、立体交差、駅周辺に不足する自転車置場など解決すべき問題は山積している。例えば前述のような、電線の地中化や立体交差を促進したり、車の通らない高速の変わりに、第二東名高速や都市の高速道路の二層化などをすれば、多くの国民から拍手を持って迎えられるだろう。国民の身近な分野への、積極的な投資を押し進めなければならない。

所得税と法人税の税率は、やっと諸外国並の水準へと下げられた。しかし、様々な経緯により設定された種々の控除や、租税特別措置は、依然あまりにも多くわかりづらい。社会保障制度の見直しと併せ、全てを一端廃止して、必要な物だけを新たに設置すべきだ。「公平な税こそ、公平な政治」である以上、税体系も構造改革の時期に来ている。サラリーマンも、ただ源泉徴収で給与からさし引かれた税金の額を見るだけのではなく、アメリカのように、年末調整や、確定申告を自分の手で行うことで、税に対する不公平感も払拭され、税への理解も深まるだろう。

その基本となるのは、国民の税に対する意識改革だ。租税教育を小・中学校で積極的に行い、税に対する理解を広めなければならない。税は自分の受けているサービスの対価として、自分が暮らしているこの国を維持するため払うのであって、その代わり、使い道は十分監視するという意識が国民一人一人に芽生えた時、本当の意味での税の構造改革が完了するのだ。

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