メディアに掲載された石原伸晃関連記事を以下よりご覧頂けます。
月刊THE21 8月号
猪瀬直樹の
「知恵の和」講座 第8回
「痛みを伴う行革」ではなく
「夢のある行革」の推進を
- ゲスト
- 石原伸晃行政改革・規制改革担当大臣
じつは構造改革は「みんなが得する」話
猪瀬:小泉政権は構造改革に「痛みを伴う」といいすぎではないでしょうか。そもそも行政改革というのは、基本的にいい話のはずですよね。ですが、橋本内閣の1府12省庁再編は看板の掛け替えに終わったし、98年の財革法(財政構造改革法)は景気失速の原因になったため、行革まで暗いイメージで捉えられています。行革とは「みんなが得するもの」という話をするべきではないかと思うのです。
石原:おっしゃるとおりです。補助金1つとっても、一般会計・特別会計合わせると年間5兆3000億円もあるわけです。この部分の無駄を仮に1割削るだけでも5000億円ですから、かなりの金額になります。ですからいま、どこに無駄があるのかを整理しているところです。猪瀬先生がおっしゃっている公益法人まではなかなか手が回りませんが。先日も国会の委員会で質問が出たのですが、水道検査の資格を取るためには、静岡県の人も東京の講習会に参加しなければならない仕組みになっているというのです。それで具体的に技術が向上するわけでも何でもありません。こういった無駄が社会的コストを高めています。
猪瀬:水道本管から家庭に入るパイプの検査のための資格とかね。そうした細かい講習と資格取得で、金をむしりとられている。
石原:そういう無駄がなくなれば、コストを削減できるから、各家庭が工事してもらう際の値段も下がるはずです。そんなケースがほかにもたくさんあります。
猪瀬:とにかく明るい話がほしい。全体的にトーンが暗いから、株価も低迷している。メディアもわかっていないのです。つまり、いろいろな問題はあるけれども、「行革が成功すれば未来は明るい」ということをもっと強調しなければならない。つねに伸晃さんが「これから明るくなるぞ」と、訴え続けることが大事でしょう。たとえば、特殊法人の補助金の1割を削減して5000億円、さらに民営化して税金を払ってもらえば5000億円。合わせれば1兆円儲かるのです。
石原:税金、安いですからね。
猪瀬:さらに、公益法人には税金を投入していますよね。僕が五年前に調べたときには3900億円だったのが、いまは5000億円になっている。25%も増えており、すごい伸び率です。道路公団は6〜7年前に1000億円だったのが、いまは3000億円を超ぇています。これもまた民営化して税金をとれば、公益法人は26000もありますから、税収は5000億円くらいになる。そういうことをメディアの人も、市場にいるマーケットの人も意外と知りません。
石原:ふたを開けてみたら不良債権がいっぱいあるんじゃないかと、ネガティブな面ばかりが強調されていますね。
猪瀬:そうなんです。道路公団も民営化して、高速道路のサービスエリアにマツキヨやユニクロを入れて、宿泊施設も豪華なホテルにし、結婚式でもやって利益を出せばいい。(笑)
石原:いまはその利益が借金返済に回らずに、内部留保になっています。儲かるのは子会社ばかりで、本業ではどんどん道路をつくるから、ちっとも高速料金が下がらない。
猪瀬:道路公団は一等地を独占的・排他的に使っているわけですから、民営化して、高い家賃で企業を誘致すれば、差益で借金を返せると思います。インターチェンジの周辺に土地をもっているのだから、アウトレットモールにすれば、絶対儲かります。
石原:そのいい例が御殿場ですよね。御殿場インターのすぐそばの遊園地だった場所にできたアウトレットモールに、年間150万人がくるらしいですから。
猪瀬:同じことを、道路公団は自前の土地でできるわけです。そういった明るい話を、もっとはっきり打ち出したほうがいい。わかりやすい話を持ち出してこないと、構造改革はどうも話が難しくて、一般の人にはわかりません。
石原:改革の対象になる個別の公団や事業団の名前は、本年度中に出すつもりです。実際にお宅の○○公団の事業をやめましょうという話になるわけです。そのとき初めて、議論が実態を伴ってくると思います。
猪瀬:こちら側(政府)から、この事業とこの事業は要らないんじゃないか、というかたちで迫るわけですよね。
石原:はい。現在、公認会計士が入ってチェックしており、どの事業が必要か必要でないのかが把握できるでしょう。あとは関連事業について調査すれば、そのバーチャルな連結決算が9月には出てきますので、それと合わせてみれば、より詳しい実態が把握できると思います。
猪瀬:今度は、向こうが「この事業は必要なんだ」と弁明をしなくてはならないかたちにもっていきたいわけですね。
石原:そうです。すでに具体的な団体名が挙がるたびに、「ウチの事業は全部必要なんです」という話がどんどん出てきています。
1兆円の有効活用法をメルマガで募集しよう
猪瀬:話は変わりますが、小泉さんのメールマガジンが発刊初日で100万部を超えました。これはさらに増えるでしょう。
石原:登録は無料ですからね。
猪瀬:それで思ったのですが、特殊法人の1兆円をどう使うか、メルマガで有効な活用法を募集したらどうでしょうか。
石原:公募してしまうわけですね。
猪瀬:そうです。日本の景気をよくするために1兆円をどう使ぅか。「ふるさと創生事業」のときのように、純金のお風呂をつくるとかではなく、政策的に真面目な論文として募集する。
石原:でも、1兆円はリアリティーがないですね。1億円ならすごくリアリティーがありますが……。
猪瀬:村おこしじやなくて国おこしですから、やはりそのくらい必要でしょう。「公共事業」という言葉以外の何かを使って、新しいことを考えるのです。
石原:たしかにいろいろなことができますね。東京湾アクアラインだって、1兆5000億円もかけてあんなものをつくってしまったわけですから。そうすると、地元に飛行場をつくってくれという、従来どおりの発想がけっこう多いかもしれませんね。(笑)
猪瀬:だから、学生とか大学院生とかに考えさせればいいのです。いまの大学生は勉強しませんが、そういうきっかけがあれば、勉強するようになるでしょう。
石原:私だったら何をするかって聞いてくださいよ(笑)。私は、大学教育を無料にしたいのです。
猪瀬:いいアイデアですね。
石原:英語を学びに海外に行きたいという人は、みんな無料で行かせてしまう。
猪瀬:留学費用を無料にしたら、みんな日本からいなくなっちゃうでしょうね。
石原:帰ってきたときに英語で試験して、話せるようになっていなかったら、費用の半分を払わせるとか。
猪瀬:せっかく小泉内閣は人気があるのですから、明るい話題づくりと、アイデアはたくさんもっているというイメージを、メルマガも含めてどんどん打ち出したほうがいいと思います。
石原:あとはやはり公益法人ですね。こちらのほうが数も多いし、難題です。猪瀬さんがこれまで指摘されてきたようなものは、国の業務委託型ではないのです。次の段階で手を着ける子定ですが、道路公団などよりも問題が多い。委託型のほうが、まだ財務諸表もきちんとしています。
猪瀬:先般の行革断行評議会で公益法人を税制面から攻められないか議論してみました。現在、政令で33事業を収益事業に指定しており、試験とか資格とかの販売は「請負業」になります。でも、その請負業に当てはまらない公益法人がたくさんありますから、それらも政令で収益事業だと指定してしまえばいいのです。そうすれば、結局……。
石原:税金を払わざるを得なくなる。
猪瀬:政令改正は石原行革担当大臣が小泉総理に提案すれば、案外すんなりいくのではないかと思いますが。
石原:いい案だと思います。やっぱり税金ですよ。試験や資格の販売をしている公益法人で、どうしてもそれが必要だというのなら、民間企業も参入させるべきです。でもそれだけでは民間にハンディキャップがあるから、民間と同様に税金は払ってもらうことも考えなければなりません。税金を払うとなれば、試験料を民間よりも安く設定するのは難しいでしょう。
猪瀬:業務委託型の公益法人は、法律改正をしながら詰めていけばいいでしょう。ただ、業務委託型にも内部留保がけっこうあります。先日の公益法人総点検の結果には、内部留保のことが書いていません。内部留保を吐き出させたら、1社で30億円とか100億円くらい出てくるかもしれません。そうなると臨時収入になります。こうして、さっきからわれわれは、「儲かる話」ばかりしているんですよね(笑)。それがいまは、「痛み」がどうとか、暗い話になっているのです。たしかに、構造改革をすれば一時的に雇用に悪影響を与えますが、なにもすでに明日、誰かがクビになるわけではありません。いま現在は、誰も痛くないはずなのです。なのに、「痛みを伴う」とメディアが騒ぐから、かえって改革の妨げになる可能性があります。
石原:そうですね。「痛み」という言葉は使わないほうがいい。
国民はどれだけの問題意識をもっているか
猪瀬:いずれにせよ、公益法人の法律の及ばない範囲がブラック・マーケット化しており、早く手をつけなければいけません。しかもいまは国家公認のブラック・マーケットになっています。民法34条まで改正できればいいのですが。
石原:やはり、それを変えないと無理ですね。
猪瀬:だけど、それは法務省の管轄になってしまいます。
石原:法務省も動きが遅いのです。「十年考えます」というようなことを平気でいいますから。
猪瀬:そうですね。ならば少なくとも、政令は変えられるのではないですか。ハンセン病問題の解決にしても、ある意味では政令を変えるような話でしょう。だったら、小泉さんのひと言で変わるのではないですか。
石原:ただ、最近では法務省も変わってきています。以前は法務省がネックになって話が進みませんでした。破産法などがいい例です。和議法を直すのに、最初は5年かかるといったのです。それでは駄目だということで、ハッパをかけて議員立法でやったら、一年でできました。彼らも急がせればやれるのです。
猪瀬:中間法人の問題のときも、民法34条をいずれ見直すという付帯決議をつけましたよね。
石原:ついています。問題意識はもっているのです。
猪瀬:議員立法ではできませんか。
石原:やはり民法34条に、議員立法は難しいでしょう。法務省を急がせてやらせるしかありません。
猪瀬:改革を進めるためにはメディアの力も必要かもしれませんが、伸晃さんがどんどん方針を打ち出していけば、メディアもついてくると思います。あとはスピードと、やはり国民の理解力ですね。
石原:猪瀬さんがテレビでどれだけ説明してくれても、国民の人がどのくらいの問題意識をもっているか、まだまだわからないですね。国民の理解が進んだ段階で、「やっぱり世の中が暗くなるなら、構造改革なんてやめよう」と思っているのか、猪瀬さんがいうように、こうなりますよとビジョンを示せば「じゃあ、やってくれ」となるのか。ところが、いまの報道は田中真紀子さんばかりがクローズアップされているから(笑)、そうした議論がなかなか表に出てこないのです。
猪瀬:テレビは食いつきやすいほうに流れますから。たぶん小泉さんの「郵政三事業民営化」についても、しっかりと理解している国民は10%もいないでしょう。みんな、郵便局の配達のおじさんとクロネコヤマトを比べるだけなのです。本質は郵便貯金の問題なのに。
石原:私はこういっています。小泉さんは郵便局のおじさんに民間のクロネコのマークをつけさせろといっているのではない。郵便貯金と保険にお金が貯まっていて、このお金がどこにいって、どう運用されているのかわからないのが問題だといっているのだと。そういうとみんな、「はぁ」という顔をしてますね。
猪瀬:だから僕は、「支持率90%、理解力10%」といっているのです(笑)。話は戻りますが、やはり1兆円の政策をみんなで考えましょう。こうやったらセーフティ・ネットや失業率の問題も含めてうまくいくという案をね。日本人の悪いところは、「小泉さんは偉い人。あなたを選びましたから、あとはお願い」という他力本願なところです。そうではなくて、「国民のみなさんは何やるの?」と問いかけるのが、これからの小泉さんの手法になると思います。
石原:「あなたは、何をやるのか」と。
猪瀬:そうです。だからこそ、1兆円の使い途の募集なのです。それをメルマガでやりましょう。石原行革担当大臣が書いてくれればいい。
石原:残念ながら、私はすでに創刊準備号に寄稿してしまったのです。次はいつ順番が回ってくるか。(笑)
猪瀬:割り込みましょうよ。いまの世の中は、99%が暗い話で占められています。明るい話題が必要でしょう。
石原:「行革に夢を」ですね。行革で浮いたお金は、夢のあることに使うべきですね。無駄な公共事業は節約する。もちろん必要なところには使う。その結果、行事で浮いたお金や儲かったお金は、みんなが明るくなるようなことに使いましょうと。
猪瀬:「痛みを伴う行革」ではなく、「明るい行革」ということを100回くらいアピールしていきたいですね。今日はありがとうございました。
小泉内閣の行革担当大臣の石原伸晃さんとは、これまでにもテレビ局のスタジオでしばしばご一緒する機会があった。
スタジオでともに討論したり、画面で眺めたりしているうちに、伸晃さんの表情が、数年前ぐらいから、ぐんぐんとよくなっていく、甘さが消えてキレのある顔つきになっていく、そんな印象を受けていた。大宅壮一が「男の顔は履歴書である」といったが、その通りに変化していると見受けられた。
そう思っていたら、行革担当大臣になられた。当選回数が4回だから大抜擢人事ということだ。小泉さんは、もっとも難題の特殊法人、公益法人問題を伸晃さんに託そうとしたのは、充分に信頼しているからだろう。
そしてこのほど行革担当大臣の諮問機関として行革断行評議会がつくられた。「断行」とは絶対にやる、という意味である。僕はすぐに馳せ参じた。特殊法人の民営化などで伸晃さんに具体的なお手伝いができる機会ができた。全面的に協力したい。
[猪瀬]