日本経済新聞第二部(2013年12月11日)

環境相 石原 伸晃 氏

環境相
石原 伸晃 氏

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が今年9月に公表した報告書は、温暖化の進行は明確であること、そして人為的な影響が温暖化の主要な要因であった可能性が極めて高いことを示しました。我が国においても今年は竜巻や頻発する台風など、これまで経験したことがないような極端な気象が相次ぎ、各地で大きな被害が発生しました。また、私は最近いくつかの島しょ国を訪問し、気候変動が国家の存亡に大きな影を落としている状況を目の当たりにしてきました。
先月開催された気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)において、我が国は2020年度の温暖化ガス削減目標を05年度比3・8%減とすることを発表しました。この目標は、既に世界最高水準にある日本のエネルギー効率を20%も改善するという野心的なものです。また、原子力発電による削減効果を含めずに設定した現時点の目標であり、今後のエネルギー政策の検討の進展を踏まえて見直し、確定的な目標を設定します。
また、COP19では日本のさらなる貢献策として、①革新的技術の開発②日本の技術の海外展開③13年から3年間で官民合わせて1兆6千億円の途上国支援--を柱とする「攻めの地球温暖化外交戦略~Actions for Cool Earth:ACE(エース)」を打ち出しました。
日本の技術の普及を加速し、世界全体の排出削減と新たな成長を図っていきます。こうした取り組みの主要な柱となるのが2国間クレジット制度(JCM)です。COP19期間中に開催したJCM署名国会合(ACEクラブ)では、JCMに対して各国から強い期待が示されました。JCMを通じ途上国が低炭素社会へ一足飛びに移行することを支援します。
20年目標の達成、さらにその後の長期にわたって大幅な削減を目指す上で鍵となるのが、我が国の世界最先端の「環境技術」です。
環境省では、今年10月に長崎県五島市椛島沖において、我が国初となる本格的な2000キロワット浮体式洋上風力発電施設の運転を開始しました。また来年度からは、この洋上風力で発電した電気のエネルギーを、水素としてためて利用する実証を行う予定です。こうした世界でも最先端の再生可能エネルギーの実証事業などを戦略的に進め、地域でエネルギーを「創り」「蓄え」「融通し合う」、自立・分散型の低炭素エネルギー社会を実現したいと思います。
また、低炭素型の社会システムおよびライフスタイルの推進によるエネルギー消費の大幅な削減の実現「減エネ」に取り組んでいきます。さらに、低炭素ライフスタイルのより一層の普及に向けて新たな国民運動を立ち上げるべく、準備を行っています。
今年で15回目という節目の開催を迎えるエコプロダクツ展には、一人でも多くの方に会場まで足を運んでいただき、我が国が誇る世界最先端レベルの環境技術に触れ、新しいライフスタイルのヒントや、未来を共に創造していくための貴重な機会としていただくことを期待しています。