ガスエネルギー新聞(2014年1月1日)

エネファーム_大臣_1

石原伸晃 環境相

-13年11月の気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)をどう評価するか。
COP19における日本政府の主張はシンプルだ。20年以降の枠組みはすべての国が参加し公平で実効性のあるものにしなければならないという1点に尽きる。国別排出量で上位の中国、米国、インドが参加しない枠組みでは、気候変動を食い止める効果は限定的だ。
COP19の最大の成果は、主要排出国も含め、先進国と途上国が15年にパリで開催されるCOP21に十分に先立って、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス削減約束の草案を示すと明文化したことだ。
-20年以降の日本の削減目標は、いつ表明するのか。
14年9月の国連における気候サミットで20年以降の姿を表明することができるよう検討を進めたい。安倍総理の考え次第だが、潘基文国連事務総長が示した気候サミットで大胆な行動を提示してほしい、という要請に応える必要がある。
今年1月にはエネルギー基本計画が決まる。原子力規制委員会により安全が確認され、立地自治体等の理解と協力が得られれば、いずれかのタイミングで原発も再稼働されていく。安倍政権の「3年以内にベストミックス目標を設定する」という方針が前倒しされれば、温暖化目標を掲げることは可能だ。エネルギーの需要サイド、供給サイド両面で行える対策を深掘りした野心的な目標になるだろう。
-20年の日本の削減目標として「05年比3・8%削減」を発表したが。
日本政府代表として私は、原発の排出削減効果を含めない現時点での目標として3・8%削減目標を表明した。エネルギー効率を20%も改善させる野心的目標だ。同時に、技術革新のために今後5年間に官民合わせ1100億㌦(11兆円)の国内投資を行うこと、さらに13~15年に約160億㌦(1・6兆円)の途上国支援を行うことを約束した。また07年に安倍首相が掲げた「50年までに世界全体で50%、先進国で80%」という削減目標を改めて掲げ、長期的な取り組みを呼び掛けた。
-「目標が低すぎる」と各国から非難されたとの報道もあった。
実際の感じとは達う。COPは多国間の会議なので、会議場で相手の弱点を突くような発言が出ることはよくあること。しかし実際は、エネルギー消費効率で世界トップレベルの日本が、エネ効率をさらに2割深掘りすることに驚きの声があった。また二国間会談ではむしろ、途上国グループが求めていた資金的支援について、日本が一定の負担を表明したことを感謝する国が多かった。
日本が、大震災と原発事故という特殊事情の中で、最大限努力していることが評価されたと感じている。
-エネルギー効率の2割向上は野心的目標だ。
確かに、ここ10年間でも1割程度しか改善しておらず、簡単ではない。今の省エネルギー法は、年率1%のエネルギー消費原単位改善を努力義務にしているが、経済成長の見込みは年率約2%。経済成長しながら、CO2排出量を減らすには、省エネルギーの一層の深掘りが必要だ。効率的な空調機器やボイラーなどの先進的技術を導入していくための支援などを行っていく。
-エネファームなどコージェネレーションの活用は重要ではないか。
エネファーム補助は、近いうちに廃止されると聞いているが、廃止により普及の勢いを削ぐのではないかと懸念している。私は、今後も政府として補助制度を含め推進策を実施することが重要と考えている。せっかく価格も下がってきて、買う人も増えた。小型のマンション用も出てきたし、本格普及のステージはいよいよこれからだ。せっかく芽が出てきたのだから、育成策をどんどん行った方がよい。ガス給湯器も登場した頃は庶民には手が届かなかったが、今は当たり前になった。エネファームもやがてそうなると思う。何らかの形で公的支援を続けることが必要だ。
-産業用のコージェネについては。
コージェネは省エネ性に優れており、天然ガス価格が下がれば、経済的メリットを出してもっと普及するだろう。今後は、シェールガス資源が豊かな米国や、ロシアなど様々な供給ソースに可能性が開けよう。産ガス国間の競争により供給安定性を増しながら、日本の調達価格が安くなっていくと期待している。そうなれば、エネルギーセキュリティー、経済性、環境性を同時達成できる可能性があり、大いに期待している。
-途上国への技術移転が課題になるが。
日本政府は、途上国への技術移転の新たな仕組み「二国間クレジット制度」(JCM)を提唱している。京都議定書の時は、途上国でCO2削減事業を行い、その削減量を第三者認証して取り引きできるクリーン開発メカニズム(CDM)が導入されたが、JCMはそれを補完する制度だ。COP期間中に、日本との二国間文書に署名済みの8カ国を集めた「JCM署名国会合」を開催できたのは1つの成果だと考えている。
-CDMとの違いは。
国連主導で第三者認証の手続きが複雑だったCDMは使いにくいという指摘が多かった。JCMは、日本と相手国の間で協議しながらCO2削減事業を行う。削減量の算定に際しては、国際的に認定された第三者機関の検証により信頼性を担保するが、より柔軟な制度にする。途上国が我が国の優れた省エネなどの技術を利用し、低炭素社会に移行することを支援する。削減量は日本の目標達成にも活用可能だ。JCM署名国会合にはモンゴル、バングラデシュ、エチオピア、ケニア、モルディブ、ベトナム、ラオス、インドネシアの8カ国が集まった。これが呼び水となり、12月9日に9カ国目のコスタリカとも署名した。署名国の倍増と、参加する業界を増やすのが目標だ。(聞き手・林 健、石井 義庸)