医療・介護に技術革新活用


安倍晋三首相は14日開かれた未来投資会議で、イノベーション(技術革新)を活用した新しい医療・介護体制の平成32年の構築に向け、制度整備を急ぐよう指示した。

情報通信技術(ICT)やビッグデータを導入する医療機関や事業者には診療・介護報酬の優遇を行い、取り組みを後押しする。政府は制度設計やインフラ整備の具体策を詰め、6月頃まとめる成長戦略へ反映させる。安倍首相は会議で「37年には団塊の世代が全員75歳となる。このヤマ場を乗り越えるため、国民が新しい技術を手軽に取り込めるようにする」と強調した。

未来投資会議制度整備、首相指示

医療はかかりつけ医を中心にICT活用を進める。モニターなどの通信機器を使う「遠隔診療」に関して、30年度の診療報酬改定で報酬を上乗せし対面診療と同じ体系にする。人工知能(AI)を活用する医療の優遇も検討する。
介護は、要介護者の自立支援を促す取り組みを後押しする。32年度に稼働させ、全国の介護サービスの内容を集めたデータベースを活用して自立支援を進めた事業者には、33年度の改定からの介護報酬優遇を検討。ロボットや見守りセンサーの活用は、30年度の改定での優遇を目指す。
会議後の会見で石原伸晃経済再生担当相は「介護を受けているが、自立を望む人は多い」と指摘。徘徊(はいかい)の見守りなどにセンサーを使えば「介護従事者の負担を減らせる」とも述べ、報酬見直しで後押しする意義を強調した。
会議ではこのほか、安倍首相が、企業と健康保険組合が協力して従業員の健康を増進する重要性を指摘。従業員の健康状態、医療費などのデータを集め、全国平均と比べられるようにして経営者に知らせる仕組みをつくるよう指示した。
厚生労働省の推計では37年時点の医療費は54兆円で 28年度の1・4倍、介護費が2倍の19兆にたっする。政府は「健康管理と病気・介護予防」「自立支援に」に軸足を置く新しシステムの構築により、医療費や介護費の膨張を抑制する体制づくりを目指す方針だ。